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Third Event

イサイ

​PSYCO

 

ぐるぐる。
ぐるぐるグルグル。
ぐるぐるグルグルぐるぐるグルグル。

「フッ」

笑う。
凄く心地が良い。
世界を自分を中心に回している。

そう実感している瞬間が一番気分が良い。

世界とは、自分の生に関わるモノ。
自分の生に関わらないモノのことなどどうでも良い。

家庭、友人、知人、先輩、後輩、彼女、愛人。
地球の裏でも同じ街でも、どんなジャンルに分類される者だろうと、自分の生に関与しない、メリットのないモノがいくら苦しもうが、死のうが、どうなろうが、何をしてようが、知ったことではないし、何も感じない。
逆にそれが自分の生に関与よるモノならば、メリットがあるモノであるならば、関知するし、甘受もする。


自分がどう生きたいか?
自分の為に必要な物は、モノはナニか?

自分の生にはメリットがあるモノだけを。
自分にデメリットなモノは削除を。

全は自分。
一は自分。

全ては自分。

自分が望むコトだけが起こり続ける生。

それが唯一絶対の幸福。

俺は、俺が好きなように生き、その為に必要な物に者は俺が好きなように回す。

世界は俺が中心に回している。

それが、岬 海の行動理念であり矜持でありアイデンティティ。

だからこそ、つい笑みが溢れてしまう。

今、この閉じた世界に囚われた者達が、自分の思い描く通りに回っていく様が楽しくて嬉しくて気分が高揚する。

全ては俺の為にある。

カツーン、カツーン、カツーン。

そんなことを考えながら薄暗い廊下を歩む。
目的地へと向かって。

カツーン、カツーン、カツーン。

カツーン、カツーン、カツッ・・・

「おぉぉー!海君!」
「社長!またお会いできましたね。」

大きなショルダーバッグを重そうに抱えた太った豚がこちらに向かって歩いてくる。
金を用いて自己顕示欲を満たすことしか考えていない。
金でしか己に価値を付与できない、保有している金しかメリットのない豚。
その金すら失い、利用価値がなくなった家畜。
そんな奴の使い道は決まっている。

「いやー、本当に海くんは素晴らしい!!流石ワシが見込んだ漢だ!!この金の出処は聞かないが、有難く頂戴することにするよ!」
「ええ。そんなもので良かったらいくらでも持ってって下さい社長。お世話になりましたからね。」

大金の入ったバックをバンバンと叩き、ここに来た時とは正反対の活力が満ちた笑顔を浮かべる社長。
二人の歩みは進み、赤黒い霧が漂う、その距離が縮まっていく。

「あぁ、懐かしいな~。EdeNで君が紹介してくれた女性達は本当に可愛いく良い子ばかりだった。またワシが復活したら、たんまり君のイベントに金を落とすから期待しててくれよ! !」
「ええ。楽しみにしています社長。」

赤黒い霧の間から、はっきりとお互いの顔が見える。
瞳と瞳が合い、お互いに笑みを浮かべる。

カツーン。

「おぉ!そういえば肝心の出口というのはどこにあるんだね?」
「それはですね・・・」

霧を抜け、交差する二人の身体。
男子トイレを示すLEDの看板がパチッ、パチッっと点滅をし、二人の姿を霧の中に映し出す。
霧がより赤みを増していく。

社長の胸元に突き刺さったナイフから溢れ出す赤い血をまるで吸い取るように。

「な・・・んで・・・分かっだぁ・・・?」

「秘密。」

社長の瞳が赤黒く染まり、人のそれとは異なるものへと変貌していく。

口から泡混じりに溢れる血も黒く淀み、床に真っ黒な血溜まりを作り出す。

「ミザァぁキぃィ!!ガァぁイぃィィ!!!」

社長は、社長の形をしたナニかが、赤黒い霧となり霧散する。

そこに残ったのは、大きなショルダーバック。
少し開いた中から血と臓物が付着した大量の札束が覗く。

男子トイレの中に目を向ける。

LEDの点滅が、オブジェを写し出す。

首が根元から引き千切れ、首から股下にかけて、かんなで削り取ったかのようにハラワタが食い散らかされ、剥き出し、小枝のように折りちりばめられた骨格に臓物の欠片が絡みつき、血で黒ずんだ緑色の粘着質な液体がそのオブジェにまとわりつき照らす灯を鈍く反射する。

圧倒的な死のビジョンと、蒸せかえる血肉の香り。

社長の残骸を一瞥し、床に落ちたショルダーバックから数枚の万札を取り出すと残骸に向けて放る。


「フ、フフ、、ハ、生贄ご苦労様。タク代です。」



カツーン、カツーン、カツーン。

カツーン、カツーン、カツーン・・・



くぐもった笑い声と足音が廊下の奥へと消えていく。


「ノルマ、クリア。」




---浅山 太一、死亡。残り5名---




「お待たせ致しました。アマレットジンジャーです。」
「ありがと。マコト君。」

ヒナは差し出されたカクテルを一口味わい、クスっと笑顔を浮かべた。
思わず見惚れてしまい、カクテルを作る手が止まる。

そんな自分の瞳を楽しそうに見ているヒナの視線を感じ、慌てて後ろを向き、自身のカクテルを作り始める。

濁った血のような霧で悪くなった視界からお目当てのリキュールを再度探す。

ドライ・ジンはやはり見当たらない。

生々しい瞳が浮ぶ、血肉が沸き立ち変色したドリンクやリキュールの中から、変質していないものを取り出す。

それでも怖いので、毒味は自分で試し済み。

久々の再会。

ヒナが好きなアラウンド ・ザ・ワ ールドを呑ませてあげたかった。

ないものはしょうがないので、自分も同じアマレットを使いウィスキーと合わせる。

お酒はそんなに強くないのだが、この異常な事態とヒナが目の前にいる緊張を誤魔化そうと、度数の強いカクテルをグラス満杯に注ぎこむ。

「「乾杯」」

二人同時にカクテルグラスに口をつける。
お互いを見つめ合う。

「この感じ懐かしいね。」

先に口を開いたのはヒナだった。

「うん。しばらく会ってなかったからね。久々にヒナに会えて本当に嬉しいよ。」

「ごめん。私、そんなにBARに行ってなかった?」

ヒナは少し困ったように視線を背けながら、空になったグラスを揺らし、傾ける。

「全然!逆に色んなところからお誘い受けているのに来てくれるだけで嬉しいよ!」

自分もグラスを空にし、ヒナのグラスに同じカクテルを注ぎこむ。

「最後が暑くなりすぎたくらいだから、だいたい1カ月前くらいかな・・・?」

そう、最後にヒナを見たのはちょうど梅雨で連日雨が続いていた日。

今日のような大雨の日。

窓の外は暗い闇だけが広がり、土砂降りだったはずの雨音はもう聞こえない。

「そっか・・・」

何故か、ヒナの瞳に哀しみ?後悔?
一瞬陰りが映ったような気がした。

心配になりヒナの顔を覗きこもうとした瞬間、逆に優しく圧迫感のある笑顔で、ヒナが自分の顔を覗きこんできた。

「そういえばマコト君、勉強は捗ってるの?」

一瞬、ほろ苦さと、焦りの鼓動の高鳴りで 思考回路がフリーズ。

不出来な自分と違い、ヒナは某有名女子大学をトップで入学した秀才であり、さらに実家が古くから続く名家らしく生粋のお嬢様である。
才色兼備とはまさに彼女の為にある言葉だと自分は思っている。

そんな彼女が自分のBARに訪れた際は、雑談をまじえながら自分の勉学の面倒も見てもらっている。
自分にとってヒナは先生でもあるのだ。

彼女がBARを出て行く時には宿題を出される。
数学のある方程式を使いこなせるようにしておくこと。
古典の単語を覚えておくこと。
etc

そして必ず言われる。
バイトも大事だけど勉強もちゃんとすること。
一番はちゃんと睡眠をとって健康でいること。

本当に、なんで彼女が自分なんかを目にかけてくれるのかが分からない。
そして怖い。

自分に優しくしてくれるのは只の彼女の気まぐれで、飽きたらすぐに忘れられてしまうのだはないかと。

そんなことは心配しても無駄だし、無意味なので考えないようにしているが、連日続く悪夢での睡眠不足を考えると思った以上に不安を感じているのかもしれない。

ただ自分にできることはヒナが自分に使ってくれる時間に自分は全力で応えることだけ。
なので勉強が悪夢続きで捗っていなかったなどということは言語道断なのである。

おそらくこのあとヒナから何かしらの質問がくるだろう。
必ず答えなければならない。

さぁ、最後に彼女がBARを訪れた時に出された宿題はなんだったか・・・?
だけれども、1ヶ月前の雨の日の記憶を思い出そうとしても、モヤがかかったように何も浮かんでこなかった。

焦る・・・

「・・・・・まぁ、そこそこは。」

「Is it on you?」

ヒナはグラスを片手に微笑みかける。

「い・・・・あ・・・Yes?」

「正解ー。」

くすっと笑いながらヒナはカクテルグラスを再度こちらへと差し出す。

本日二度目の乾杯。

そして自分の口から出る安堵のため息。
正直なんて言ったのか分からなかったが、このシチュエーション的に問いかけには正解したらしい。
これが自分とヒナの日常の一部。

自分が苦手な英語は、ヒナがカクテル片手にその時のシチュエーションに合わせた実用的な質問をしてくれる。
教えてくれる。

正直、BARで用いる実用英語は受験に必要な知識だはないことが多いけれど、外人の客も相手にするBARのバイトではヒナから教わる実用英語がとても役に立っていた。
感謝して いた。
そして反面、ヒナがその語学力を用いてクラブで外国人の男と談笑しているのであろう妄想をしてネガティブ雑念を溜め込んでしまうのだが。

「ちなみに今の質問は、このカクテルはマコト君のおごりだよね?って意味ね。」

英語が分かっていなかったことはバレバレだったらしい。
ヒナの視線が、どうだ参ったか?と言っている。
再び、くすくすっと笑いながらヒナはグラスに口をつける。

時折魅せるその笑みが妙に艶かしく、それが彼女の白く純なイメージと混ざりあい、自分を虜にした絶妙な魅力を創り出す。

白と黒。
光と闇。

相反する決して交わらないモノが絶妙に混ざりあった極上のカクテル。
それが雨地 雛に自分が感じるイメージである。

だけど、その根本にあるもの、自分が恋をしたものは彼女の純な優しさ。

無論、こんな異常な空間での異様なBARで勝手に使ったリキュールで作ったカクテルに対してお金を要求することはありえないのだが、そうしたことも洒落ての問答だったのだろう。

少しでも今、この時間だけは日常を過ごせるように。
少しでも自分の緊張や恐怖を忘れさせようとの彼女の気遣いが感じられる。

社長がエントランスフロアから消えた後、海も社長と同じ通路へと消え、自分はヒナの提案により、泉と呼ばれたヤクザと、沙羅と呼ばれたキャバ嬢の後を追うことにした。

しかし、移動したフロアには既に二人の気配はなく、無暗に動き回る前に一度状況 を整理する為、変質の少ないBARカウンターに腰を下ろし今に至る。

ヒナは笑みを浮かべながらグラスのカクテルを一口、また一口と呑みほしていく。

その姿に見惚れる。

それをごまかすように、自分のグラスにも同じカクテルを注ぎ足す。

「そういえば初めてナイトクラブに来たな・・・・」

「そう・・・なの?」

ヒナが驚いたようにこちらを見る。

そう、こんな街に住んでいるのに、クラブに行ったことは今までなかった。
BARで、ヒナからナイトクラブの話を何度も聞いて、また、ヒナともっと同じ世界にいたくて、今度一緒にナイトクラブで開催されるイベントに行ってみようという話をしていたはず。

「確か、一度クラブのイベントに一緒に行こうて話してたよね?まさかこんな形で実現するとは思ってなかったけど。」

「・・・・そう・・だね。」
暗く沈む、ヒナの視線を観て、洒落のつもりでついた自分の発言の愚かしさに気づき、自分も視線を手元のグラスへとおろす。

数秒の沈黙がとてつもなく長く感じる。

何をやってるんだ自分は・・・・


今日、久々に出会ってから、暗い視線ばかりを落とすヒナを少しでも和せたくて、カクテルを作り、他愛もない話に興じようとしたのに、逆に気分を落としてどうするんだ。

自己嫌悪。
事故嫌悪。

相手の気持ちや考えてることは、視線を観ればなんとなく分かる。
だけれども、自分の行為や発言が、相手の気持ちや考えをどう変えてしまうのかが分からない。

両親から受けた英才教育の副産物である特技も中途半端。
まったくもって自分の不出来を嘆く。

ただ、今は嘆いてはいられない。
ヒナを守りこの異常から早く抜け出さないと。

「・・・・・・・」
「・・・・・・・」

沈黙が続く。

ヒナの視線から和やかさが消え去り、失意?嘆き?が覗かせる。

「第2問。ドッペルとは?」

・・・・・・・

「・・・・・・もう一人の自分。同じ容姿、知識を持つ化け物・・・僕たちが殺さなきゃならない存在・・・」

辺りに立ち込める赤黒い霧が自分達を取り囲むように、その濃さを増す。
イマの現実に急に引き戻される。

エントランスフロアから皆が去った時、ヒナが、イマ自分達が置かれている状況、状態、異常、常軌を逸する事象やドッペルに関して、説明、説得をしてくれた。
それは岬 海から聞いた内容の補足と、省いた事項に関して。

そのことは突然の訪問者である自分を覗いては事前に説明されていたらしい。

「第3問、ドッペルはどうやって殺せば良い?」

・・・・・・・

「決して自分のドッペルの瞳を見ないように、背後から不意打ちで・・・」

バーカウンターのテーブルから生まれ出た瞳がギョロリとこちらを覗く。
その視線からは何の意思も感じ取れない。
ただ見ているだけ。
この異質で異様で不気味な空間は自分達をただ閉じ込めているだけ。

ただ、物理法則を無視して、決して自分達を逃さないこの異界がヒナの話の説得力を裏付けていた。

「正解・・・と補足。ドッペルは確実に息の根を止めたと確信するまで絶対に気を抜かないで。致命傷を与えたと思ったらすぐに背を向けて全力で逃げて。致命傷を与えても、死ぬまでに瞳が合ってしまったらおしまい。」

ヒナの瞳はまっすぐに自分を見ている。
その言葉に、視線は、嘘、偽りを述べていない。
彼女は冗談は言うが嘘は言わない人だ。

「・・・瞳が合ったらいったいどうなるの?」

「死ぬ・・・・」

まるで、火に触れたら火傷をするように。
お酒を呑んだら酔ってしまうように。
当然のように、日常のように死を発するヒナの瞳に寒気を感じる。

今、自分の目の前にいるのは本当に、いつもBARで他愛もない話にグラスを傾けあった、あのヒナなのであろうか・・・?

「正確にはドッペルが異形の化物と化して襲ってくる。人の身では絶対に逃れられない絶望的な怪物が自分を殺すまで追いかけてくる。このナイトクラブが変貌したように。自分のドッペルを殺すまで絶対に逃れられないように。」

化物・・・・

ザッザザザザザザザ

頭の中のノイズにそれは現れる。
異形の怪物。
赤い瞳。

走る頭痛と共に、その姿は瞬時に消え去る。

最近見たホラー映画を思い出す。

雪で閉ざされた研究施設で発見した地球外生命体が、次々と研究員達に寄生し、さっきまで人間だった友人、同僚達が次々と異形の怪物となり襲ってくる驚怖。
それと同じような状況が起ころうとしている。
既に起こっている?

先ほどのビジョンは、映画に出てきたモンスターだったか?

ただゾッとした。
暗く淀んだ赤い瞳には、やけにリアリティがあった。

ヒナの瞳も、怪物の存在が嘘ではないことを語っている。

「本当に・・・その話が本当だったら、今からでもみんなを集めて一緒に行動するべきだよ!」

海に訴えたことを再度ヒナに訴えかける。
もはや手遅れかもしれないけど、ホラー映画でも定石は一人になった者から怪物の餌食となっていくのだ。
皆がバラけないで、最初のエントランスエントランスフロアに固まっているおんが一番安全なはずなのだ。

だけど、海がそうしたように、このゲームの他の参加者がそうしたように、自分のその意見はヒナにも否定される。

「マコトくん。ドッペル殺しは、それじゃ生き残れないの。ドッペルは瞳が合わなければ普通の人間と変わらないから簡単に殺せる。だけど、自分のドッペルを殺すには、自分自身を殺すには、資格が必要となる。」

資格・・・・・
何の資格・・・・?
殺す為の資格・・・
語るヒナの瞳はぶれない。
嘘を言っていないことが分かる。
ヒナが、嘘ではなく、殺すということを当然のように語っている。
自分を殺せ、他者のドッペルを殺せと語っている。

BARで今日初めて会ってからずっと感じている違和感。
このヒナは、本当に自分が知っているヒナなのだろうか?

「聞いてる?マコトくん?」
「・・・うん。資格って?」

ヒナが再び注がれたカクテルを飲み干し、それを逆さにする。

変質したバーカウンターに、溶け出した氷が2粒転がる。

ヒナはその一つを空になったグラスで叩き割る。

「他の人のドッペルを殺すこと。他者の死を克服して、初めてもう一人の自分を殺せる資格を持てる。」

弾けた氷が水飛沫と共に飛散し、顔に僅かな水滴がかかる。

それが冷や汗と共に頬を伝う。

ヒナの瞳は暗く暗く。
BARで見た時よりも、ここに来てから今までで一番暗く冷たい視線を割れた氷に向けていた。

その感情は読み取れない。
・・・・正確には感じても理解できない感情。

ヒナは叩き割られた氷のすぐ隣にある、もう一つの氷を叩き割る。

「そしてドッペルを。自分のドッペルを自分以外の者に殺された者は死ぬ。」

ヒナは続けて砕けきっていない氷にグラスを叩きつける。

「自分のドッペルを殺さなければ、ここからは生きて出られない。」

割れた氷が、さらに細かく霧散していく。

「自分のドッペルを殺すためには、他の人のドッペルを殺さなければならない。」

既に砕けた氷の残骸で濡れたバーカウンターにグラスを叩きつけ続ける。

「自分のドッペルを他の人に殺されたら自分も死んでしまう。だからドッペルを、他の参加者よりに殺される前に見つけて殺さなくちゃいけない。」

声が出ない。
ヒナはもう叩き殺された氷には視線を向けていない。
自分の瞳を見ている。
自身に向けられて初めてヒナの視線に宿っていた感情の正体を知る。

初めてBARでヒナに会った時に、チンピラから向けられていた視線。
時々、街中でのトラブルで感じた視線。
それらに込められたモノより一線を画して強い感情。

殺意。

「自分のドッペルを殺し、生き残るためには、他の人を一人生贄に殺さなくちゃいけない。ここに閉じ込められている6人が全員生きてここから出ることはない。3人は確実に死ぬ。自分が生き残る為には、他の人の死を捧げないといけない。殺さないといけない。」

理解した。
自分と会っていなかった間に何があったかは分からない。
だけど、ヒナはもう自分が知っているヒナではなくなってしまったのだ。

「だからマコトくん。早くドッペルを殺しに行こう。」

ヒナは、グラスをカウンターに置くと、その手を自分へと伸ばす。
その手を掴んだ先にあるものはなんなのだろう。
ただなんであれ、ヒナが自分が知っているヒナではなくなってしまっていようと、自分には変わらないことなのだ。

「うん・・・・」

ヒナへの自分の気持ちは変わらないのだから。

伸ばされた手を取る。
バーのグラスやリキュールをそのままに、ヒナに手を引かれながら歩き出す。
クラブEdeNのさらに奥へと。

赤黒い霧が立ち込める、さらに奥へと。





「ねぇぇ。カズさん。」

「・・・・・・・・・・」

女の甘ったるい声と、執拗に腕や腰に絡みつく女の身体。
男はそんな女の態度を全く意に介さず歩を進める。

「私ってそんな魅力ないですかぁ?カズさぁん。」

「・・・・離せ・・・ウゼェ。」

黒いパーカーをダボつかせ羽織り、シャツの隙間から龍の刺青を覗かせる男。
多田一広は、心の中で何度も舌打ちをしながら、金髪に派手なドレスを着た夜の匂い漂う女を腕に絡ませフロアを進む。

最初のエントランスフロアから隣のフロアを通り、途中の螺旋階段を上がった2階部分。

高級そうなソファや高級インテリアだったモノの残骸が、異質に変わり果て点在している。
壁には所々に鏡が張り巡らされ、金や銀の彫刻やカーテンがフロアを区分けしている。

踊るスペースがないことや、個室のような扉もある。

1階が交流の為のフロアだとしたら、ここはランクの高い顧客が密かに交わるVIPフロアなのだろう。

以前、このEdeNに来た時との記憶とも照合し、男は確信する。

先ほどまでの赤黒い霧は少し薄まり、ピンクのような紫のような霧へと変わっていた。

血肉臓物の変わりにマネキンのような無機質な灰色の手足や、喜怒哀楽、様々な感情を模した仮面が赤黒い鉄線に絡まり、壁もインテリアも1階と同じく異質に異様な変貌を遂げた空間。

1階とはまた違う異次元。
先刻までが、残虐性や死への恐怖や不快を連想させる空間だとしたら、ここは背徳や未知への気持ち悪さを漂わせる空間であった。

「チッ・・・」

多田は、生理的に受け付けない雰囲気に思わず舌打ちを口に出す。

「そんな舌打ちまでしなくても、酷いですよぉ。お話しましょ。」

チッ・・・。再び多田は心の中で舌打ちをする。

「カズさんは今回の話どこまで信用してます?ドッペルに、神の力に。ドッペルって見たら何日以内に死ぬっていうドッペルゲンガーってあるじゃないですか?本当にいたとして、見たら死んじゃうんなら、どうやって殺せば良いんですか?」

「・・・知らん。アイツが言うには、見たらじゃなくて、瞳を合わせたら死ぬんだろ。合わせずに後ろから殺せばいい。」

「流石カズさぁん!神の力ってなんなんですかね?お金?何かの超能力とか?お金がいいなぁ。浅山社長も1億もらえるみたいだし、100億くらいあれば何でもできるし、まさしく神の力ですよねぇ。」

「・・・知らん。そもそもアイツの言うことに根拠なんてねぇだろ。こんな状況だから半分打算で信じてやってるが、適当言ってやがったらドッペルだかの前にあの野郎を殺してやる・・・」

「ヤダァ!カズさぁん怖い~!みんな仲良くしましょうよ~!ね。」

女が一層、身体を密着させる。

チッ・・・。多田は今日何度目か分からない舌打ちを心の中でする。

こんな女、置き去りにして早く目的を達成しなければ。

いち早くエントランスフロアを抜けてドッペルの探索を始めた矢先、怖いから自分も連れてってと、この女がいきなり抱きついて来た。
それからずっと側から離れようとしない。

岬のガキの話を信用するならば、このゲームで生き残れるのは最大でも半数の3人。
場合によっては、この女のドッペルを殺す場合もありえるのだ。

自分のドッペルを殺すための生贄は早いもの勝ちなのだ。
それ以前に、自分のドッペルとやらが、いつの間にか他の奴に殺され、自分も目的を遂げられずに死を迎えるという展開もありえる。

この女含め、エントランスフロアにいた奴らに自分と同じ体躯や知識を持つドッペルが殺られるとは思えないが。
例外として岬のガキを除いて。

フロアで揉めあった時に見たあいつの瞳。
自分が生きている極道の世界でも、稀に見る瞳。
人殺しの瞳。
それも不可抗力などではなく、必要であれば作業として人を殺せる者の目。

チッ・・・。

焦燥が心に走る。

腕にしがみついた女に目線を向ける。

置いていくのは簡単だ・・・。

力で引き離して、そのままフロアを走り抜けてしまえば良い。

しつこいようならば、一発手をあげればもう追ってこないだろう。

だが、多田にはそれができない。

自身の目的である、行方不明になっている尊敬するアニキ分から、女を大切にできない奴は漢じゃない。女に手をあげる奴はクズだ。と教わっていているからである。

「ねぇ・・・カズさぁん。ちょっとそのあたりのソファで休みませんか?ドッペルがどこにいるかも分からないし、無闇に歩き回って体力使うよりも、もしかしたらここで待ち伏せした方が良いかもしれませんよ。」

「・・・・・・・・・」

多田は少し目を閉じ、心で軽く舌打ちをしながら、上がってきた螺旋階段と、もう一方の出口からは見えにくく、尚且つ両方を監視できる場所に置かれているソファに腰を下ろす。

何度かこのクラブには来たことがあるが、造りが入り組んでおり、また空間全体が異形と化している今の状態では過去の記憶を辿っても現在地を正確に把握できない。
そして、確かにこの女の言う通り、もう一人の自分とやらが何処にいるか分からない状態で無闇に動き回るよりは、出入りが監視できる場所で待ち伏せするのは合理的だ。

「・・・・・・・・・」

薄暗がりのさらに霧たちこめる中、浅田は両の手を組みながら二つの出入り口を監視する。
数少ないフロアを照らすライトはちょうど下のフロアとこのフロアを繋ぐ階段を上がったところと、隣の部屋へと繋がっている扉の付近に集中しており。
誰かがこのフロアに入ってくれば、この霧でも人影をすぐに捉えることができる。
逆にこちら側は霧で隠れ、死角となるのでうってつけの場所だろう。

「・・・・・・・・・」
「・・・・・・・・・」

コチッコチッと腕時計の秒針が時を刻む。
その左腕に胸を押し付けるように女がしがみ付いている。

上目使いの瞳をこちらに向け、わざとらしく息を少し荒らげている。

くだらない。

多田はこういう人種の女が嫌いであった。

守ってもらって当たり前。
ご馳走してもらって当たり前。
プライドは高いくせに、何かあると自分は悪くないと、誰かや何かのせいにして嫌なことから逃げる。
逃げれると思っている。

何故なら自分は若くて綺麗な女なのだろうから。
そんな自分が困っているのだから。
色気を露わに身体を合わせているのだから。

そうして男に、何かに依存し、より居心地の良いモノがあれば拠り所を簡単に変える。

吐き気がする程の嫌悪感が左腕から伝わってくる。

自分は違った。
自分はそんなことはできなかった。

生まれた時から孤独だった。
孤児院で育ち、最低限の保護という名の下、誰にも頼らずに自分の力のみで生きてきた。
自分の力で勝ち取っていかなければ生きられなかった。
孤児院内では配布される少ない食料を孤児同士で殴り合い奪い取った。
働けるようになってからは、マトモなバイトができない代わりにマトモではない仕事で金を稼いだ。
トラブルが起きても誰も助けてはくれないので、相手から受けたものと、仕事の上司から受けたものと、年を重ねるごとに身体に痣が増えていった。

それは成熟した後も同じ。

生きる為に何でもやった。
その結果、生きることすら危うくなった。

日の当たる世界に自分を頼らせてくれるところはなかった。
だから非合法な世界で生きた。

誰にも頼らず。
誰にも頼れず。

何にも属さず。
何にも属せず。

結果行き着いたのは、暗く淀んだ空気が立ち籠める路地裏。
所々に散らばるガラクタに赤黒い錆が見受けれらるところから、此処はこうした処刑に使われている所なのだろう。
この街の死角。

死が製造される角地。

一匹狼でしていた商売が、どうやらこの街を牛耳る暴力組織の目に止まったらしい。

「殺せよ・・・」

諦めた・・・フリをした。
見るからに暴力を5人の男達に囲まれたこの状況。
生き残るためには、油断をつくしかない。

もう諦めて、達観したフリをして相手の接近を待つ。
一人目を盾に取る。

4人を背に先頭に佇む男。
黒の短髪、黒のパーカーに黒パンをビシリと着こなした男。
背が低く、それでいて、路地に差し込む真夏の日差しを遮るように佇む男。

明らかに他の4人が気をつかい。
他の4人とは一線を画す眼光を宿していた。

この男が頭。
この男を抑えれば活路は見出せる。

「・・・殺せって・・・」

いっこうにこちらを見たまま動かない男に向かって、投げやりな視線を送る。

さぁ、近づいてこい。
流石にチャカはこんな場所では使わないだろう。
用いてナイフ。
近寄った所で勝負をかける。

男が一歩踏み出す。

「気にいった。」

唖然とする。
男が差し出したのは拳銃でもなく、ナイフでもなく、手の平だった。

「はぁ・・・?」

思わず声が漏れる。

「俺と来い。」

男は有無を言わさぬように、自分の手を掴んでいた。
自分の瞳を覗き込んでいる真っ黒な瞳。

「殺さないの・・か・・・」

今掴まれている手を少しひねればこいつを人質にできる。
なのに、動けない・・・

男が腕を引っ張り自分を路地裏の闇から立たせる。

「殺さない!俺と来い!」

男は大笑いしながら、次は肩を組んできた。

なんだ!?なんなんだ!?

「なんなんだアンタ!?いったいどうしたいんだ!!??俺を殺すんじゃないのか!!??」

「気が変わった!お前はできる奴だ!俺の元に来い!!」

「なんで!?」

「煩い!!いいから来い!!!」

そうして、兄貴と出会い、兄貴の組織で兄貴と行動を共にするようになった。
何にも頼らず依存してこなかった自分が初めて人を頼るようになった。
人に依存するようになった。

「俺はお前を頼る!だからお前は俺を頼れ!!」

人に頼らされた。
そして初めて人に頼られた。
自分のただ一人の理解者。

その兄貴が殺された。

兄貴とは良くこのナイトクラブには仕事で訪れた。
個室で行われる違法な商談。
それをまとめる兄貴。

自分が兄貴の仕事に邪魔が入らないように見張る。

慣れたローテーション。

慣れほど怖いものはない。
兄貴はよくそう言っていた。

慣れると、人はできているつもりで行動する。
できていて当たり前だと思うようになる。
仕事が雑になる。

商談の帰り路。
自分が車までの安全を確認していた。
していたはずだった。
怪しい者はいなかったはずだった。

慣れた瞳で確認したのだから。
油断。

車までの数十メートル。

ナイフを手に持つ覆面の男達に囲まれ殴られた。

一瞬の出来事。

病院で目覚めた自分に届いたのは、組からの破門状と兄貴の死の伝達。

覆面の男達は、まだ警察にも、こちらの世界でも捕まっていないということだった。

一生でただ一人、頼り頼られた人。

そうした人を多田は失った。

「ねぇ・・カズさぁん。」

こうして簡単に人を頼る、依存する奴は嫌いだ。

だけど、一方で羨ましいのかもしれない。

自分にはもう頼れる人は現れないのだろうから。

「カズさん、私どうしても叶えたい願いがあるんです。」

女の口調が変わった。
その瞳も。

「私・・・どうしても殺したい人がいるの。」

その瞳は嫌いではなかった。
暗い孤独を知る瞳。

「ロビーで海くんが言ってたこと覚えてます?」

「・・・・・・」

「私がここに来た理由。」

「・・・・・・店の金を盗ったんだったか?」

「愛した人がいたの。店のボーイだったんですけど。私が店の金庫からお金を盗って、彼がそれを外に運び出す。だけど、ことが終わった後の集合場所に彼が現れることはなかった。捨てられたの・・・私。残ったのは追われる人生と、彼への憎しみ。ありそうな話でしょ?」

「・・・・・・」

「ロクな人生を歩んでこなかった私が、そんな上手く幸せになれるはずなかったんだけど。海くんは私を逃亡させて新しい人生を用意してくれるって言ってるけど、そんなに期待してないの。だけど・・・・あの男だけは許さない・・・。」

手を掴む女の手がギリギリと音を立てるように握られ、伸びた爪が皮膚に食い込む。

「泥にまみれた人生の中で、あの人だけは私のことを本当に愛してくれた。私も初めて人を信用して愛した。それなのに裏切った。私を裏切った。あんなに愛していたのに!あんなに尽くしてきたのに!!あんなに信じていたのに!!!」

女の形相が、大きくなっていく声とともにドス黒いものへと変わっていく。
復讐に囚われた顔。
自分も鏡を見ればこのような形相をしているのだろうか?

「だから殺す!絶対に殺してやるの!切り落として!引き摺り回して!叩きつけて!何度でも何度でも殺して殺して殺してやる!!!」

女のそれはもはや人ではなくなっていた。
まるで夜叉。
手に食い込んだ爪は皮膚を突き破り出血を伴うようになっていたが、そんな女の執念は好きだった。

「殺す!!殺す!!!殺す!!!!殺す!!!!!!殺してやる!!!!!あのオトコ!!!!そして、過去の自分も。」

女が手を掴んでた手を離し、それをそっと自分の頬にそえる。
まるで愛しい人に口づけをするかのように顔を近づける。
その形相と瞳には先ほどまでの禍々しさはなく。
男を惑わす夜の世界の笑み。

「だけど、ねぇ。私考えたの。私を裏切った男は殺すわ。でももっと殺さなきゃいけないのが他にいるって。それは私自身。弱くて、脆くて、依存して、裏切られて、惨めで、心の醜い私自身。」

女の唇が自分のそれと重なる。
抵抗できなかった。

「だからね。カズさん。私は神の力が欲しいの。強くなりたかったの。依存しながら強い男性にずっと憧れてたんだなって気づいたの。あ、私が男になりたいって意味じゃないですよ。強ければ誰かに依存することも、媚びることも、惨めな思いをすることもなくなるなって。だから海君の話にすがりついたの。神の力が欲しくって。まさに神頼みで・・・・。ここ笑うとこですよカズさぁん。」

女がジッと自分の瞳を覗き込みながら、舌を口内奥深くまでねじ込み、舐め回す。この舌を噛み切ってやりたい・・・・。この女を殺してやりたい。いや、この女は殺さなくてはならない。

「カズさんてこういう味なんだ。フフッ、フフフッ。カズさぁん。ドッペルはいるんですよ。そして神の力もあるんですよ。信じてくれましたぁ??」

チッ!チッ!チッ!チッ!チッ!チッ!チッ!チッ!
何度舌打ちを心の中でしても、何度身体に力を込めて、目の前の女を・・・魔女を殺そうとしてもピクリとも身体が動かない。自分の瞳を覗く、この女の瞳が赫く変色し出してから・・・


「フフッ、フフフッ、フフフフフフフフフフ!!!!この気持ちなの!!!この力なの!!!私が欲しかったのは!!!!カズさぁん。身体・・・動かないでしょ。これが私の神の力。ゴーゴンの邪眼。力があるって驕ってる男どもを無様な蛙にする瞳。」

女の瞳がよりいっそう赫く鈍い光を放つ。
息すらも自由にできなくなってくる。
全身から冷や汗が噴き出す。
チッ!チッ!チッ!チッ!チッ!チッ!チッ!チッ!
この女の言う通り、まさに蛇に睨まれた蛙。

ふざけるな!ざけるな!!ざけんな!!!
いくら心で叫んでも、口はもはや一ミリも動かない。
まるで全身が石になってしまったように。

「カズさぁん。嘘ついてゴメンなさい。私実はドッペルも、この神の力のことも知ってたんですぅ。二回目なんです。ドッペル殺し。フフッ、フフフッ。そう、弱い私はもう死んだんです。今の私はゴーゴン。弱い男共を喰らう魔性の蛇。」

女が瞳をそのままに、腰のあたりから、バタフライナイフを取り出す。それはフロアで岬の野郎が自分を脅したものと同じデザインだった。

「あの男はずっとこのまま見つめ続けて殺してやったんです。フフッ、フフフッ。最初は身体、次に内蔵が動かなくなってくんですよぉ。息ができなくなっていって泡拭きながら、顔青ざめさせて、目が真っ赤になって、水もないのに溺れて窒息して最後には心臓が止まるんです。フフフフフフフフ。窒息死って一番苦しいらしいですよ。」

取り出されたナイフが女の赫い光で鈍く光る。
それがだんだん持ち上げられ、自分の胸部辺りに止まる。

「でもカズさんは良い人だから、苦しまずに殺してあげますねぇ。なんかカズさんて他人って気がしなくて。本当は殺さずに飼ってあげたいんですけどぉ。海くんからも殺せってお願いされちゃったから。だから・・・・ね。」

女の手に持つナイフがゆっくりと服を裂き、皮膚に食い込んでいく。
慣れほど怖いものはない。

兄貴を目の前で刺され。
決してもう誰も信用せず、自分すらも信用せず、常に猜疑心と警戒を。
そんな中、女の話に自分を重ねてしまい、今度は自分の命が消えようとしている。

油断。

酸素が殆ど行き届かなくなった脳に浮かぶのは果てしないほどの憎しみ。
学べず、何も成し得ず、復讐すらも果たせずに死を迎えようとしている、愚かすぎる自分への憎しみ。

殺してやる。殺してやる!殺してやる!!殺してやる!!!
目の前の女を!岬のガキも!!愚かな自分も!!!そして兄貴を殺したヤロウを!!!!

殺す!!!!!!


「殺してあげる。」

女の赫く輝く眼が目の前に迫り、鈍い痛みが胸部を突き刺し始める。

薄れる意識の中、憎しみもばやけだしながら、多田が聞いたのは笑い声。

フフッ、フフフ。

それは薄暗いフロアに反響する。

まるで迫る死のように自分の背後から聞こえてきたそれは・・・

FIN
Third Event 
-イサイ-chapter1 

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