異世界カジノ

「Pre Game」

そこはどう表現したらいいのだろうか?

そこには重力という概念はなく、金の砂塵が辺りを天の川のように縦横無尽に流れ、虹色に煌めくシャボン玉が下から上へと登っていく。

見上げた先には空はなく、ただ神々しい光だけが存在し、この場にあるものに降り注ぎ照らしていた。

様々な伝承で出てくる神々を思わせる造形をした石像がその光を浴びながら、金の川が取り囲む中心、一つの祭壇を向いて浮遊している。

 

事実それらは神々なのであろう。

様々な国、様々な時代にて信仰されてきた神々の石像。

言葉ではなく直接頭に彼らの声が響いてくる。

 

そうしたもの達に囲まれた祭壇は、四角錐と呼ばれる立体であった。

目算が正しければ底面が正方形のため、正四角錐と呼ぶのが妥当だろう。

 

その一面の四角形を構成する辺のそれぞれに2名づつ人影が浮いていた。

小さな正四角錐の上に座っていた。正確に言うと捕らえられていたいた。

 

小さな四角錐からは、頭上に輝くのと同じ光が、まるでロープのようにうねり、自らの上に腰を置く者の足や腰を縛り上げていた。

決してここから逃がさないように。

 

この浮遊する四三角錐の群れを祭壇と呼んだのは、金の川の向こう、浮遊する石像がこちらを見ながら「今日の儀式も楽しめそうだ。」「どの贄にするか。」などの単語が含まれていたことから、自分が座らされている小さな正四角錐と、ちょうどディナーを取るテーブルのような大きさと高さに浮かぶ正四角錐は何かの儀式に用いられるものだということを推測し、尚且つ自分達を見ながら贄と言ったことを考え、これは自分達を生贄に何かの儀式が行われる祭壇なのだと解釈した。

 

自分達と言ったが、同じくここに囚われている者達がいた。

同じ人なのかは判らないが・・・・

それほどまでに異質な面々であった。

 

四角錐のテーブルの右辺にいる男女は甲冑と十字架を模した武具のようなものを持ち、まるでファンタジーもののアニメから出てきた戦士のように見えた。

風貌全てから殺気が立ち込め、死線をくぐった者の視線とでもいうのだろうか?

その瞳は常人のそれとは比べられない力強さを持っていた。

 

 

もう左辺にいる少女は、姉妹なのか同じ顔をしていた。ゴスロリ風の服に白い肌、異国の地を思わす瞳。そして柄より羽根を生やした日本刀を持っている。

肌や髪、目の色から欧州あたりだろうか?

パッと見た感じは異国からやってきた侍好きのゴスロリ観光少女。

ただ、そこにいるのに、まるでそこにいないような存在感。

この世の者とは思えない美しい顔立ちの中、口元からそっと垣間見える牙が二人は人間とは別格の存在なのだと感じさせた。

 

 

向かいの辺にいる男女は、女性は時計を咥えたドクロのついた大きな帽子を目深に被り、胸元の大きな青い薔薇をつけており、男性は漆黒のマントに全身にチェスの駒をくくりつけていた。

どう見ても尋常ではない風貌だが、その装束にはコスプレとは言えないような存在感があり、そのままの印象を言葉にするのならば、魔法使い。

といったところだろう。

 

 

そして最後の一辺、私が座らされている隣に同じく拘束されている少女。

制服を着ており、見た目は女子高生。

ただ、右眼に眼帯をかけ、制服のボタンにドッグタグを引っ掛け、左の腕章の刺繍は漢字の四。極めつけは、太もものホルスターに軍隊用のナイフが装着されていることだった。

 

見た感じ同じ日本人のようであったが、その短い髪は白く、話す言葉のイントネーションから最近日本語を覚えた外国人なのだろうと推測する。

 

 

明らかに普通ではない者達。

かという私も格好は普通ではない。

 

白とピンクの派手な柄の和服と浴衣が相なったようなコスプレに身を包み。

手にはナイフを握っている。

主催に携わっていたイベントで浴衣コンテストに和服くノ一という設定で参加をさせられそうになったところ、気がついたらここにいたのだ。

 

これが、各国コスプレイヤーさん大集合!といったイベントだったとしたら、どれだけ気が楽だったことか・・・

だが、私が手に持つラバー式の模造ナイフと違い、隣にいる女子高生の軍用ナイフも、右辺に座る少女達の日本刀と牙も、左辺に座る男女の十字架を模した武具も、正面のい座る男女の装束も、決してその存在感は偽物のそれではなく、この空間も夢のそれではないことを足を縛る光のロープが食い込む痛みが実感させる。

 

どうしてこんなことに・・・

 

そう心の中で呟いた瞬間。

 

「「レディース・アンド・ジェントルメン!!」」

 

頭上に輝く光の中より、女性の甲高い声が聴こえ、二つの人影が降ってきた。

 

その人影は虹色に輝くシャボン玉の上にポヨンっと着地をすると、ババンッ!っという擬音が鳴り響きそうなほどの派手なポージングを決めていた。

 

「「ババンッ!!」」

 

実際に言葉にしていた。

 

降り立った人影は赤ベースと黒ベースのチャイナドレスのような格好をそれぞれしていた。

胸元部分が水着のように開いており、ガーターベルトで繋がったフリル付きのスカートと、網タイツからメイド服のような印象も受けたので、チャイナメイドと呼称することにした。

 

赤色のチャイナメイドが鶴のようなキメポーズのまま器用にシャボン玉の上でバランスを取り告げる。

 

「鶴は万年!」

 

黒色のチャイナメイドが亀?のようなキメポーズのままグラグラと今にも落ちそうになりながらシャボン玉の上で告げる。

 

「亀は千年!」

 

そうして二人は、再びババンッ!という擬音が鳴り響きそうな機敏さで腕組みのポーズで仁王立ちをキメる。

 

「「神は永遠!!」」

 

鶴は千年、亀は万年のことを言いたかったのだろうか?

ツッコミどころが満載な二人のチャイナメイドだが、ここで目が覚めてから色々とショッキングなことばかりだったので、私の脳は最早そうした細かいところは許容範囲と判断したようだ。

 

「そう!神は不滅の存在!!永劫の時を見護る万能なる存在!!!そんな神にとって一番の苦悩!!!それすなわち退屈なり!!!!」

 

赤きチャイナメイドが語る。

 

「神々は考えた!様々な遊戯を!!しかしそれにも飽き!!考えた末にこの場が創られたのだ!!!」

 

黒きチャイナメイドが語る。

 

「「自らが創造した幾多の世界より、稀代な才を持つ者達を召喚し!戦わせ!!勝敗の行方を賭けに興じる神戯場を!!」」

 

 

シャボン玉から飛び立った少女達は、正四角錐のテーブルへと舞い降りる。

 

 

「「おめでとう!君達は神々に選ばれたのだ!!時を、世界を越えて!!!光栄なる神の代行者!!プレイヤーとして!!!」」

 

くるくると二人手を繋ぎながら回転し、囚われの者たちを見渡す。

 

「「君達にはこれより、神のゲームをプレイしてもらう!!見事勝ち抜いた者は!!褒美として願いを何でも一つ叶えよう!!!」」

 

囚われの者たちの表情が変わる。

 

「「君達は願ったはずだ!神に!!その願いが成就する場が此処だ!!さぁ!!!開場しよう」」

 

「「「異世界カジノを!!」」


fin.
written by 鷹人

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